その2 真実の大切さ



 「真実を・・・ありがとう・・・」


 映画「2010年宇宙の旅」が日本で公開されたのは1985年3月のこと。思えば、小生若干19歳で2年目の“充実した”大学生活へ向けて意気揚々としていたころだった。当時は、オールナイトフジなんていう過激な深夜番組が人気を集め、その主役はオールナイターズと呼ばれた現役女子大生たち、まさにJDブーム。バブル経済が既に始まっており、マハラジャに代表されるディスコ、お立ち台、コンパ、一気飲み、そしてデート代はすべて男性持ちという、やり手の女性にはまさに夢のような時代だったと思います。これらの代名詞となっている青田典子さん、岡本夏生さんらを思い浮かべていただければ分かりやすいですね。「メッシー君」「アッシー君」という言葉も流行しました。最近ではATMというらしい(笑)ですが、できれば避けたいものです。異色の「ネッシー君」というのもいて、こちらは実にうらやましい存在でした。そうそう、AKB48の前身?である秋元康プロデュースの「おニャン子クラブ」もこの頃です。

 当時、もう一つ大きなイベントがありました。「国際科学技術博覧会」(つくば万博EXPO‘85)が同年3月~9月まで茨城県筑波郡谷田部町(現在は6町村合併でつくば市)で開催されました。実はここに、関東を中心とした女子大生たちが各パビリオンのコンパニオンとして大量に集結したのです。各大学のミスコンの優勝者もたくさんいて、ミス青学だった○○○○○さんは民法キー局の人気女子アナになりましたね。しまった、仲良くなっておけばよかった…と、勝手な思い込みですが、社会人に成り立てのころは結構、後悔しました(爆笑)。
 小生はここ、茨城県新治郡桜村(当時はムラでした)で大学生活を過ごしていたので、冒頭の“充実した”の意味が分かっていただけるかと思います。現実的には、学内をランニング、半ズボン、サンダル、首にタオルで歩く男性と、フェリス、青学などのファッショナブルな女性が釣り合うわけもなく、彼女たちは涼しいパビリオンの中でちやほやされ、男性たちは炎天下の中、駐車場整理に追われるといった悲惨な状況でした(泣)。そういえば、1回100円の簡易トイレがたくさんあったな。

 そんな科学技術の粋を集めた祭典が行われると同時にこの映画は公開されました。25年後には、容易に宇宙(作品は木星)を行き来できるようになっていることを想像しての2010年だったのでしょうか? 公開当時はすでにスペースシャトルの飛行、宇宙ステーション設置も行われており、そう遠くない将来、現実のものとなることを期待させたものです。また、HAL9000という人工知能(AI)を持ったコンピュータが大きな役割を与えられて登場します。実はこの作品、「2001年宇宙の旅」という前作があって、混乱(人間で言う精神分裂症)したHALの思考部を停止させることを乗組員たちが企てる。賢いHALはその企てに気付き、自己防衛策として乗組員の全員殺害を実行するが、船長ボーマンの殺害に失敗し思考部を止められてしまう。続編では、HALの混乱の原因が解き明かされているのだが、乗組員には表向きの目的しか伝えず、本来の目的を伏せたまま大願を成就しようという矛盾であった。実社会では、よく見かける表と裏。しかし、AIがここまで理解し、かつ、感情を持つようになることについては…かなり複雑な心境だ。

 木星から帰還するためには、HALの宇宙船ディスカバリーを離脱用ブースターとして利用した上で木星圏内に残すしか手段がない。HALに“死んで”もらうほかないわけだ。しかし、そのストレスに耐えられず、再び混乱、暴走する可能性があるためHALにはこの事実を伝えられずにいた。不審に思ったHALは出発を取りやめようとするため、仕方なく真実を話す。そして…。


「真実を・・・ありがとう・・・」


宇宙
<あとがき>
 昔見た映画を改めて鑑賞すると、懐かしい当時の光景が思い浮かぶ。この回顧の瞬間が好きで見ていることが多い。妻は「また、昔の映画をみて…。ストーリーを知っているのに何が楽しいの?ひょっとして、若い頃を思い出したりしてないわよね」と、さらっと言ってのける。まったく…見透かされている…参りました。




HALの由来:それぞれのアルファベットを1つ後ろの文字に置き変えて並べてみると…某メーカーです(笑)

                                                           byかすみ草