◎具体的な展開方法は?(終章)◎

最近の食品スーパーでは考え方がだいぶ柔軟になって来たと思いますが、私が現役で青果の売場担当者だった頃は部門間の壁が高く、更には部門内でもカテゴリー毎に職人気質の方が数多く居たものです。
「刺身の造りは天下一品」
「握り寿司を握らせたら右に出る者なし」
「フルーツの盛り合わせは当に芸術品」
「バラ陳列の天才」
そんな豪傑がゾロゾロ居ました。
しかし、そういう方に限って自分の技術を他人に教えないもので、覚えたかったら勝手に見て覚えろ、位の感じでした。
また、そういう方々は結構頑固なもので、柔軟な発想はなかなか受け付けないものです。
例えば、刺身のツマ用の大根、大葉、食菊でさえも青果担当者を通さずに、独自に仲卸に頼んで仕入れていたものでした。(ごく当然のように…)
私が市場で直接モノを見て商品を買い付けたほうがよっぽど新鮮で安く仕入れられるのにと思ってはいましたが、あえてそれを言うこともしませんでした。
当時は、あくまで他の部門のこと、他人事だったのです。
でもこれからはそれではいけません。
タイムマーチャンダイジングには店舗総力戦、柔軟な発想が不可欠なのです。
産直で朝モギとうもろこしを仕入れたら、午前中は青果でバラ売り、午後からは惣菜部門で焼きとうもろこしにして実演販売、夕方以降は輪切りにして茹で立ての枝豆とコラボでおつまみセット販売、といったように新鮮で美味しい商品を、時間毎に見た目をドンドン変えていかないと駄目なのです。
丸魚だって、午前中は丸モノで売って、午後は三枚におろして、またはサクにして、夕方は造りや握りにして提供するといったような手間をかけた展開が必要なのです。
青果は青果、惣菜は惣菜、鮮魚は鮮魚、という考え方や仕入ルートは、一旦ゼロベースで考え直さないといけません。
ハンバーグだって精肉部門で挽いた挽き立てのミンチを使って、惣菜部門で作ったほうが美味しいに違いありません。
問題は部門間横断で商品を販売提供した場合の各部門の利益の取り分です。
仕入移動金額プラス何パーセントかの加工工賃を事前に取り決めておく必要があります。
これは作業負荷を考えて、加工内容毎にきめ細かく取り決めておかなければいけません。
そうすれば、みんな快く、加工作業に協力してくれます。
だって加工して部門間移動した分はロスなしで自部門の利益になるわけですから…
これも店長の説得力と裁量一つにかかっています。
「時は金なり」

次回は「展開後の検証」について述べてみたいと思います。

-タイムマーチャンダイジングとは-その⑤  に続く。